2024/03/19

 「筒井康隆笑劇場」 東京で上演
  高平哲郎さんが企画、演出

 不条理やブラック・ユーモアなど、作家の筒井康隆さん(89)が描く世界観を舞台化した「筒井康隆笑劇場」が3月8~14日、東京都渋谷区のシアター・アルファ東京で上演された。
筒井さんと親交を重ねる劇作家、演出家の高平哲郎さん(77)が「笑いの実践集団」の第一弾として企画した。
 筒井さんの著書を長く愛読してきた高平さん。筒井さんが「ことば狩り」などに抗議して“断筆宣言”をした翌1994年、東京で「筒井康隆断筆祭」が開かれたときは、高平さんが演出を手がけ、ジャズピアニストの山下洋輔さんらが出演した。
 「自分たちと異なるものは排除するという風潮は、昭和の時代からまったく変わっていない」(高平さん)といい、筒井さんが皮肉や笑いをまぶして社会に突きつけたものを表現したのが今回の「笑劇場」と言える。第一弾では、「一について」「乗越駅の刑罰」「ヒノマル酒場」など、筒井さんの短編からナンセンスやパロディーなどの要素が強い6作品を選び、寸劇や朗読などで紡いだ。俳優の小堺一機さん、竹下景子さん、松田洋治さんらが出演し、「大人のエンターテインメント」を披露した。今後も「筒井ワールド」を題材に「笑いの実践集団」の活動を続ける予定だ。【明珍美紀】






2022/10/07

サルトルの戯曲
俳優のサヘル・ローズさんがヒロイン役

 仏の哲学者、ジャン=ポール・サルトルの戯曲を原作にした劇団「新宿梁山泊」の舞台「恭しき娼婦」が東京都中野区の「芝居砦・満天星」で上演中だ。イラン出身の俳優、サヘル・ローズさん=写真=が、女性蔑視や白人至上主義などの問題に視点を置いたこの作品を「私の物語」と受け止め、ヒロインを演じている。
 酒に酔った白人の男性が黒人を殺すところを目撃した女性が、街の有力者から正当防衛だとの偽証を求められた。舞台では、女性が書類にサインするまでの心理状態や、自らも差別を受けて苦悩する姿が描かれる。
 同劇団では2018年に続く再演。今回は、9月にポーランドのグダニスクで上演した後の特別公演だ。同劇団代表で在日韓国人の金守珍さんは「自由や尊厳の侵害の問題にサルトルが真っ向から向き合った。ロシア軍のウクライナ侵攻など、いまなお戦争や民族差別が起きている時代にこの作品のメッセージをアピールしたい」という。10月9日まで。






ウクライナの隣国、ハンガリーから一時帰国
オーボエ奏者、桑名一恵さん一家がチャリティー公演

ハンガリーとの国境付近のウクライナで、ロシアの侵攻により困難な生活が続く人々を支援しようと、ブダペスト在住のオーボエ奏者、桑名一恵さん一家によるチャリティーコンサートが8月9日、東京都立川市のスタジオ「LaLaLa」(ラララ)で開かれた。ハンガリーに接するウクライナ西部、トランスカルパチア地方はハンガリー人が多く住む地域だが、「ロシアの侵攻後は首都キーウ(キエフ)などから避難してきた人もいて、生活は困窮している」という。
 東京出身の桑名さんは、桐朋学園大管楽器嘱託演奏員などを経て2000年秋、20 代後半でハンガリーに拠点を移した。この夏は夫でハンガリー人のホルン奏者、 パラティヌス・フェレンツさん(45)と高校生の長男(18)を伴って一時帰国し、「日本人にも現状を伝えたい」と今回のチャリティー公演を思い立った。演奏には、ホルンを吹く長男も加わり、ハンガリーの名曲の数々を奏でた。「隣国の戦争に対し、例えば息子が通う高校では生徒たちが自主的に支援活動を始めた」と桑名さん。「自分にできることを考え、一歩踏み出すことが大事」と話した。コンサートの収益は、ハンガリーの「ヴァルダ文化伝統保存協会」に寄付する予定だ。(明珍美紀)




ランディ・バックマンさん
再会したグレッチで演奏
東京アメリカンクラブで

盗難の被害に遭ったギターが日本で見つかり、45年ぶりに「再会」したカナダのギタリスト、ランディ・バックマンさん(78)が7月2日、東京・麻布台の東京アメリカンクラブでライブ演奏を行った。探し求めていた米グレッチ社の1957年製のギター(6120チェット・アトキンス)を披露し、参加者たちと喜びを分かち合った。
この日は、米国の独立記念日(7月4日)にちなんだ同クラブの祝賀イベントがあり、バックマンさんが特別ゲストとして登場。さっそくグレッチのギターで60年代の懐かしいヒット曲「シェイキン・オール・オーバー」を感無量の様子で奏でた。その後は別のギターに代えたが、演奏が終わるまで自身のそばに置いていた。ライブの後半は日本で活動する米国出身のギタリスト、マーティ・フリードマンさん(59)と共演。「子どものころから憧れの存在だったランディのギターが、僕の住む日本で見つかるなんてまさに奇跡」と言い、「これを機にランディと日本のミュージシャン、市民との交流が深まってほしい」と話した。

このグレッチは、バックマンさんがロックバンド「The Guess Who(ゲス・フー)」時代の77年、カナダ・トロントのホテルで盗まれた。その後、ファンが木目の特徴などを手がかりにインターネットを駆使して探したところ、日本人ミュージシャン、TAKESHIさんが手にしていた映像を発見。東京都内の中古楽器店で2014年に購入したものだった。 在日カナダ大使館で1日、ギターの引き渡しが行われることになり、バックマンさんが来日。当日は、同じ職人が製作したギターをTAKESHIさんにプレゼントした。
現在、バックマンさんのグレッチをめぐる長編ドキュメンタリーの制作が進んでおり、東京アメリカンクラブの会員がフィルムプロデューサーとして関わっている。